~源氏物語「明石」巻への招待~
「源氏物語」は「須磨」「明石」の巻から書きはじめられたとも言われています。
京の都から須磨へと流された光源氏。須磨の館では暴風雷雨、廊に落雷炎上。
光源氏は供人たちと必死に祈ります。
「住吉の神、近き境を鎮め護りたまふ。
まことに迹を垂れたまふ神ならば助けたまえ。」
光源氏が救われたのは、夢に現れた故父桐壷院の、
「住吉の神の導きたまふままに、はや、舟出してこの浦を去りね」
という夢告のお蔭です。
父院のお告げに符合するように、明石の入道の迎えがあり、
光源氏は順風に乗って明石へ移る・・・。
ようやく危機を脱したのです。
以後、光源氏の命運は「明」に転じます。
ひとたび配流、流離の憂き目にあった光源氏が、
再び帰京して官途の復権を果たし、さらに栄達の道を歩むことになります。
光源氏の前途が「明」に転じたのは神助、
住吉の神のご加護によることは論をまちません。
「源氏物語」には当時の 住吉明神への信仰の根強さが
生き生きと描かれています。
~住吉の神の申し子、明石の君の栄華物語~
明石の君は、住吉の神の「申し子」であります。
明石の君の父である明石の入道は、
「我が血筋から国母(天皇の母)が誕生する」という霊夢を信じて、
近衛中将の位を捨て、播磨の国司となります。
明石の入道は、明石の地で住吉の神を信仰し、
土着の生活に入ることで住吉の神との縁を結びます。
明石の入道が住吉の神に祈りはじめて十八年、
住吉の神の導きによって須磨から明石へ移住した「光源氏」と
入道の娘「明石の君」は結ばれることになります。
そして明石の君は懐妊し、夢告どおり女の子を出産します。
明石の君が産んだ女の子(明石の姫君)は、
光源氏と紫の上に育てられ、 東宮(皇太子)のもとへ嫁ぎます。
その後、明石の姫君(女御)は皇太子との間に
四男一女の子宝(世継)に恵まれ、
中宮の位を得ることになります。
明石の君(明石の御方)は、明石の姫君の入内と出産によって、
光源氏の地位を盤石なものとし、栄華獲得に寄与していったのです。
明石の入道の大願は成就し、
明石一族は失われた王統への再生・回帰を果たすこととなります。